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働き方改革 part1 「時間外労働の上限規制 vol.2/2」

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「36協定を結んでも、上限はある」

今回は働き方改革part1 として「時間外労働の上限規制 vol2」について書いていきます。
前回のコラムで働き方改革によって、時間外労働の上限が罰則つきで上限が設けられたお話をしました。今回はその上限について詳しく書いていきます。

≪上限≫
①法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。
②臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守らなければなりません。
②-1 時間外労働が年720時間以内
②-2 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
②-3 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
②-4 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

①について
これは原則としての時間外労働の上限規制です。月45時間が上限ということは、週休2日の企業(月の出勤日数は約22日)でざっくりと計算すると、毎日時間外労働があるとすると1日当たりの時間外労働は約2時間になります。

②について
これは①の原則に対しての例外で、「臨時的な特別の事情」があって労使が合意する場合には月45時間を超えることができます。
36協定では通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければなりません。「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。あくまでも「臨時的」でないと認められません。以下を臨時的に必要がある場合の一例として厚生労働省が挙げているものです。
(臨時的に必要がある場合の例)
・予算、決算業務・ボーナス商戦に伴う業務の繁忙・納期のひっ迫・大規模なクレームへの対応・機械のトラブルへの対応

②-1、②-2について
これはたとえ特別条項を結んだとしても、改正前のように無限に時間外労働をさせることが可能ではなく、それぞれの期間において上限があることを示しています。さらに②-2については上限時間の計算において、休日労働時間数も含まれることは要注意です。今回の法改正で初めて導入される規制となり、時間外労働と休日労働を合計するという新たな管理が必要となります。

②-3について
これは時間外労働を単月のみで把握するのではなく、複数月の平均を把握し一定時間以内に抑えることが必要であるということです。これはこれまでの労働時間管理だけでは対応できない新たな概念になります。
具体的には2~6ヶ月の平均でいずれも80時間以内に抑える必要があります。労働時間管理の手法としては5か月前から前月までの時間外労働数と休日労働数を把握することにより、当月における時間外労働時間数と休日労働時間数の最大可能時間数が導き出せます。

②-4について
これは年6月に限り特別条項を発動して月45時間を超えることができることを示しています。超える時間は関係なく、超える月数が年6月なので、例えば45時間を1時間だけ超えて、46時間となった場合にも1回とカウントされてしまいます。1年の前半のうちに45時間超の月が複数回になってしまうと、後半に臨時的に必要な事情が生じた場合でも45時間を超えて労働さすことができない可能性があります。

今回は「時間外労働の上限規制 vor2」についてでした。

ポイント

・原則として時間外労働は月45時間かつ年360時間以内
・例外として年6回に限り特別条項を発動して合計年720時間以内まで時間外労働が可能
・時間外労働と休日労働につき2~6ヶ月の平均でいずれも80時間以内、かつ単月でも100時間未満に抑えること

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